既存住宅を震動台へ移築した倒壊実験について

大阪市城東区で、性能とデザインにこだわった家づくりを手掛ける平和建設のスタッフです。
体育館のような大きな施設に家を建て、そこで大きな地震を再現できる震動台に乗せ倒壊実験を行った様子をご覧になったことがあるでしょうか?

世界最大とも言われる震動破壊実験施設、E-ディフェンスは兵庫県三木市にあります。

E-ディフェンスの震動台

ハウスメーカーなどが阪神大震災?回に耐えました。
など広告しているのはここの施設内での実験結果から広告されているので、皆様も広告を見たことがあるのではないでしょうか。

国立研究開発法人防災科学技術研究所(防災科研)が管轄する兵庫耐震工学研究センターにある施設です。混んでなければ三ノ宮駅から車で35分程度の距離で、ここ大阪市からもそれほど遠くない位置にある施設です。

しかし、研究機関であるため通常は一般公開されておらず、その実験も簡単には目にすることが難しい場所です。

既存住宅の耐震倒壊実験

震動台に乗せた倒壊実験の様子は、youtubeにも少し載せてくれているのですが、HPにはその実験自体はどんな意図で、またどんな結果だったのかと言うものも掲載してくれています。

その中でご覧になっていただきたいのが、旧耐震基準の家を西明石市から持ってきて、わざわざ施設内で建て直し、それを移築して、倒壊実験を経て破壊するという言葉だけを聞くと少し狂気?じみた実験です。

防災科研はもっと本気です。
持ってきた住宅は実際にご近所に建っていた2棟。

それを構造計算しなおし、どれほどの耐震性能があるかを確認後、1棟だけを耐震性能を引き上げ震動台に乗せています。

また面白いのはこの実験にあたって倒壊させる建物を公募したところ200件以上の応募があったそうです。みんなすごいですよね。

実験動画内容

向かって左側が補強なし、右が補強あり。
耐震補強の有効性を明らかにする検証。

再現した地震は1995年兵庫県南部地震、一般的には阪神・淡路大震災と呼ばれる地震でマグニチュード 7.3 死者 6433人 けが人 約35000人 全壊家屋 約10万棟の大きな地震でした。
この地震を機に耐震性の義務化も進んでいくのですが、、

動画を見ていただけるとわかる通り、補強なしの住宅は10秒も持たず倒壊してしまいました。
補強した住宅はモルタルの割れやゆがみなどの傷を負いながらもなんとか持ちこたえています。

耐震補強の有効性は実証された。
と言える実験内容でした。

しかし、狂気?の実験には続きがある。

防災科研は耐震補強の有効性は実証された震動台倒壊実験だけでは終わりません。
3日後、補修工事も行わないまま、再度1995年兵庫県南部地震を再現し、2回連続での震動台倒壊実験を実行しています。

結果は以下のページ
https://www.bosai.go.jp/hyogo/research/movie/movie-detail.html#2
【2】木造住宅 -在来軸組構法-(2005年11月)をご覧いただければと思います。

耐震補強だけではいけない。

少しネタバレですかね。
耐震補強だけでいいのだろうかと不安になってしまう結果で終わります。
また今回の住宅は築年数は建っていましたが、どちらの住宅も腐朽や蟻害は無視できるほど軽微なものでしたが、一度傷ついた建物は地震に相当弱くなってしまっていました。

また、どちらも腐朽や蟻害があればもっと耐震性能は損なわれており、そして耐震性だけでは何度も地震から身を守ることができません。

大地震のあとも余震は続きますし、大地震の余震は大きな地震であることが推測されます。
制震工法を取り組んだリフォームにすることで劇的に地震に強くなることが知られています。

耐震性能を引き上げ、そして制震工法を取り入れること

既存住宅の大規模リフォームは水回りなど目につきやすいところをどうしても優先しがちですが、耐震性能を引き上げ、そして制震工法を取り入れることで大切な家族を守り切ることができるのではないでしょうか?

能登の大地震が起きたときの様子を見ることができる昨今、
今一度実験の様子をご覧いただき、耐震・制震工事の必要性を知っていただければと思います。

今回ご紹介した実験は、実際に建っていた住宅で震動台倒壊実験をするという貴重な内容です。
ぜひ皆様もご覧なっていただき、今一度家のレジリエンス性能についてお考えいただけましたら幸いです。